コレステロールの新基準
2007年4月、日本動脈硬化学会が、高コレステロールの診断指針を改定しました。
今までは、総コレステロール値が220mg/dl以上の人は、治療の対象とされてきました。前々からこの程度の数値では治療の必要性はないのでは?と、疑問視されていました。
というのも、総コレステロール値が180mg/dl~200mg/dlの人は脳卒中、心筋梗塞の死亡率が一番低いとわかっていたからです。
その数値に近い220mg/dl~240mg/dlあたりの人が、即治療をし内服薬を飲み続けなければならないのかどうかと疑問視する専門家も多々ありました。
コレステロールの新基準への改訂のポイント
改訂のポイントは、総コレステロール値を診断基準からはずし、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値で診断することです。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値140mg/d以上が「脂質異常症」と呼ばれます。
今までの「高脂血症」から「脂質異常症」へととって変わりました。
脂質異常症(高脂血症)の診断基準は、LDLコレステロール値 140mg/dl以上か、HDLコレステロール値 40mg/dl未満です。しかし、この基準から外れたとたんに心筋梗塞の危険性が高まるわけではありません。
最近では、LDLやHDL以外のコレステロールも心筋梗塞の発症とかかわっていると考えられ、総コレステロール値も重要とのことです。
コレステロールの新しい診断基準
高LDLコレステロール血症 | LDLコレステロール値 | 140mg/dl以上 |
---|---|---|
低HDLコレステロール血症 | HDLコレステロール値 | 40mg/dl未満 |
高中性脂肪血症 | 中性脂肪 | 150mg/dl以上 |
女性の心筋梗塞は、男性の1/2~1/3と少ないから男女同じ基準値なのはおかしいという意見がありますが、女性でも糖尿病、喫煙、高血圧などが重なると心筋梗塞を起こしやすいそうです。
新しい診断基準が完璧かというと、そうでもないようで、数値の妥当性への疑問は残っているようです。そして、科学的根拠に乏しいと判断する人もいます。
反対に、総コレステロールが少ないと、がん、うつ症に罹り易くなると言われています。
お米を中心とした食生活で魚類、大豆製品、ヨーグルト楽天 などの乳製品、野菜、果物、余分な油を落とした肉類などをバランスよく食べることが大事です。くれぐれも食べ過ぎにならないように注意します。
コレステロール・中性脂肪の正常値
LDLコレステロール値 | 120mg/dl未満 |
HDLコレステロール値 | 40mg/dl以上 |
中性脂肪 | 150mg/dl未満 |
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値の計算方法
LDLコレステロール値=(総コレステロール値)-(HDLコレステロール値)-(中性脂肪÷5)
生活習慣に気をつけよう
善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らすには、食事、飲酒、運動などの生活習慣に日々気をつける必要があります。
善玉コレステロールを増やす方法
食事 | 植物性の油はコレステロールを減らす働きがあるが、悪玉・善玉両方とも減らしてしまいます。魚の脂や オリーブオイル楽天 は悪玉コレステロールだけを下げると言われています。甘い物、スナック類の食べ過ぎ、早食い、外食が多い、食事が不規則なことなども内蔵脂肪を増やすので注意が必要です。 |
飲酒の適量 | ビールは小瓶1本、日本酒は1合、ワインはグラス1杯、焼酎はグラス7分目 |
運動 | 有酸素運動で息が上がらない程度に全身の筋肉を動かします。食前よりも食後2時間ぐらいでの運動が効果的です。 |
悪玉コレステロールを減らす方法
1.野菜に多く含まれる食物繊維は、腸内でコレステロールを吸収し、そのまま排出するので、コレステロール値を下げる効果があります。
2.野菜の他に、昆布やワカメ、ヒジキなどの海草類も、表面のヌメリ成分が食物繊維の一種なので、野菜と同じ効果があります。
コレステロール値を下げる食品とは
- 食物繊維
- 特に水溶性食物繊維がコレステロール値を下げるようです。腸の中でコレステロールを包んで排泄します。ペクチン(りんご、みかんの皮)、ムチン(オクラ、山芋)、アルギニン(わかめ、昆布)、グルコマンナン(こんにゃく)などがコレステロール値を下げてくれます。
- ポリフェノール
- 赤ワイン、ブルーベリー、大豆、お茶などに多く含まれてす。抗酸化作用が強く、動脈硬化やがんや老化の予防にも働いてくれます。
- レシチン
- 大豆や卵黄に多く含まれています。コレステロールを分解したり、血管壁に着いたコレステロールを取り除いたり、善玉コレステロールを増やしたりもしてくれます。中性脂肪の排泄を促し、血液をサラサラにしてくれます。
- タウリン
- イカ、タコ、ホタテ、マグロなどの魚介類に多く含まれています。アミノ酸の一種で肝臓で胆汁酸の分解を促し、コレステロールの分解も促します。
- ビタミンC、E、B類
- コレステロール値を下げるには、十分なビタミン、ミネラルを取ることが大事です。ビタミンCとEは、LDLコレステロールの酸化防止作用があります。ピタミンB6、B12は、脂質の代謝を促進します。
- DHA、EPA
- DHA、EPAは、青魚に多く含まれています。中性脂肪を下げ、血液をサラサラにしてくれます。
中性脂肪は、青魚の「EPA」で低下させる
ニッスイの「イマーク」(中性脂肪を低下させる作用のあるEPA含有飲料)の宣伝から
血液中の中性脂肪は、人間が活動するためのエネルギー源でもあり、健康を維持するためには大切なものです。しかし問題なのは、それが過剰にある場合、健康を損ないかねないということです。
EPA(エイコサペンタエン酸)は、アジやイワシといった背の青い魚に豊富に含まれる天然健康成分で、継続して摂取することで中性脂肪を低下させる作用が認められています。
EPAが注目されるようになったのは、1960年代後半に実施された、デンマーク人学者・ダイアベルグ博士らによる疫学調査結果からです。
グリーンランドに住む民族イヌイットの食生活はアザラシの肉が中心で、野菜や果物はほとんど摂らないにもかかわらず、高齢まで健康な人の割合がデンマーク人に比べ多かったのです。
その理由のひとつが、血液中の豊富なEPA量。EPAは青魚に多く含まれる成分ですが、大量の魚をエサとするアザラシを食べる事で、間接的にこのEPAを多く摂取していたことが、彼らの健康の秘密でした。
EPAは、過剰な中性脂肪を低下させる作用のある大切な成分ですが、体の中ではほとんど作る事ができないために食品から摂る必要があります。これが必須脂肪酸と呼ばれるゆえんです。
玉ねぎでコレステロールを下げる
玉ねぎをたくさん食べると、「疲れない、よく寝られる、目のかすみがとれる、糖尿病、高血圧によい」とブームだった時もあります。そして、この効果は科学的にも十分証明され、老化を防ぎ、発ガンを抑制することがわかっています。
事実、タマネギはコレステロールを下げ、動脈硬化を防ぎ、血管をクリーニングするそうです。
インドのボルティア博士が、臨床的にもタマネギが血清コレステロール値を下げ、血液の凝固時間を長くし、血液をサラサラにしていること、血栓を溶かす作用のあることを確かめいています。インド料理では、肉料理に必ずタマネギが添えられているそうです。
加齢とともに増加する脂質異常症
脂質異常症は、男性では20歳代から増え、50歳代をピークにその後は少しずつ減少します。女性では、女性ホルモンの分泌が大きく減少する40歳代後半の閉経時より急激に増え、50歳以上では半数に脂質異常症が認められるそうです。
高齢者では、年を取るに従って血管が硬くなり柔軟性を失います。そして、高血圧、糖尿病、肥満、メタボリック症候群なども起こりやすくなり、複数の危険因子を持つ人も少なくありません。
年を取ること自体が、動脈硬化の危険因子であり、脳梗塞、心筋梗塞などの心血管病を発症するリスクも高まっています。
脂質異常症は、自覚症状がありません。70%近くの高齢者が脂質異常症と認識しないまま、適切な治療を受けていない現状があるそうです。少しでも早く脂質異常症を見つけ、適切な治療を始めることが大切です。
危険因子の数別、脂質管理目標値
危険因子とは、男性の場合45歳以上、女性の場合55歳以上、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族暦、低HDL-C血症(40mg/dL未満)。
また、糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併は危険因子2個と考えます。
脂質管理目標値 | |||
---|---|---|---|
危険因の数 | LDL-C(悪玉コレステロール) | HDL-C(善玉コレステロール) | 中性脂肪(トリグリセライド) |
0個 | 160mg/dL未満 | 40mg/dL以上 | 150mg/dL未満 |
1~2個 | 140mg/dL未満 | 40mg/dL以上 | 150mg/dL未満 |
3個以上 | 120mg/dL未満 | 40mg/dL以上 | 150mg/dL未満 |
冠動脈疾患あり | 100mg/dL未満 | 40mg/dL以上 | 150mg/dL未満 |
脂質異常症では、生活習慣の改善が治療の基本です。食べすぎ、動物性脂肪の取りすぎを控え、バランスのとれた食生活をします。また、適度な運動が重要です。
生活習慣の改善で十分な効果がない時には、スタチン系薬などの薬物療法も行われます。
脂質異常症の最終目標は、心血管病の予防です。脳卒中や心筋梗塞の発作を起こして寝たきりにならないようにしていきます。