「全般性不安障害」と「パニック障害」
「全般性不安障害」も「パニック障害」も元は「不安神経症」といわれていましたが、1980年の米国精神医学会の診断基準で、「パニック障害」と「全般性不安障害」に分けられたそうです。
現代社会は、不安を引き起こす要素がたくさんあります。「全般性不安障害」は、20人に1人発症すると言われます。他人ごとではなく、「全般性不安障害」や「パニック障害」への対処法を学びたいと思います。
全般性不安障害(ぜんぱんせいふあんしょうがい)とは
現代は、いろんな不安材料が揃っています。が、無意識のうちに、いろんな方法で不安をコントロールしながら生活しています。
ところがコントロールがきかず、絶えず強い不安感に苦しめられ心身の調子が悪くなり、夜も眠れなくなるなどの日常生活支障をきたすという症状が続いているのが、全般性不安障害という病気です。
元は「不安神経症」といわれていましたが、1980年の米国精神医学会の診断基準で、「パニック障害」と「全般性不安障害」に分けられました。
パニック障害楽天 の場合は突然の発作で起きますが、全般性不安障害はいつ病気が始まったのかはっきりしていないという特徴があります。
何かの心配ごとやストレスが関係している場合が多いようですが、それが原因ではなく、きっかけにすぎないと言われます。
「全般性不安障害」は、約20人に1人が一生のうちに一度以上この病気にかかっているそうです。
男性に比べて女性のほうが1.5倍から2倍くらい多く、大半は若い女性とのこと。10代で発症することもあります。
女性が多いのは、特有の生理的、心理的な要因や社会的に期待される性的役割からくるストレスなどが、複雑にからみあって症状があらわれると考えられています。
全般性不安障害の診断基準
- (仕事や学業などの)多数の出来事や活動についての過剰な不安と心配が、6ヶ月以上続いている。
- 心配や不安がない日よりも、ある日のほうが多い
- 不安や心配を自分でコントロールするのが難しい。
- 不安や心配は、次の6つの症状のうち三つ以上を伴っている。
- そわそわと落ち着きがなく、緊張したり、過敏になる。
- 疲れやすい。
- 集中力がない、または心が空白になる。
- 刺激に対して敏感に反応してしまう。
- 肩こりがあるなど筋肉が緊張している。
- 眠れない、または熟睡した感じがしない。
全般性不安障害の症状
全般性不安障害の自覚症状は、原因不明の頭痛やめまい、吐き気、のどのつかえ、手足の冷えや熱感、冷や汗、赤面、息苦しさ、動悸など様々なものがあります。
そこで、最初は内科を受診する人が多いそうです。検査をしても内科的な病気もなく、自律神経失調症と診断されることもあるようです。
全般性不安障害の患者さんの6割以上は、すでにうつ病を併発しているか、または将来発症するといわれています。
全般性不安障害の治療法
- 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や抗不安薬が使われます。
- 全般性不安障害には脳内伝達物質のセロトニンの働きの調節に不安定なところがあり、元々不安恐怖症の体質を持っている人の神経に働いて、症状を誘発する引き金になっていると考えられています。そのため脳のセロトニン神経に作用する抗不安薬が効き目が速いそうです。
- 自律訓練法
- ドイツの精神科医シュルツ氏によって開発された自己催眠法の一つです。不安な時には、体に力が入り筋肉も緊張しています。そこで、意識的に筋肉の力を抜き(脱力)、呼吸を整える(腹式呼吸)方法で体がリラックスしている状態を作り出すものです。
日常生活で気をつけること
- 規則正しい生活をする。(早寝早起きも)
- 適度な運動をする。
- 過労にならないようにする。
- お酒を飲み過ぎない。
気を使いすぎないように、体を動かして、汗をかいて、よく眠ることが良いそうです。
パニック障害とは
パニック障害は、ある日突然、心臓がドキドキしたり、呼吸が苦しくなったり、めまい、吐き気を感じる「パニック発作」を起こし、さらにいつ発作が起きるか不安になって、日常生活に支障をきたし、うつ病などを併発するリスクの高い病気です。
パニック障害
パニック障害は1990年にWHOに登録されたばかりの新しい病気ですが、『種の起源』の著者で自然科学者のチャールズ・ダーウィンもパニック障害に悩まされたようです。
パニック障害は日本国内では100人に2~4人ほどが発症すると言われ、20代、30代の女性が多いそうです。
パニック発作は、10分以内でピークに達し、ピーク時には「このまま気がおかしくなってしまうのではないか」「死んでしまうのではないか」と追い詰められ、30分前後でおさまり、何事もなかったように元の状態に戻ります。パニック障害は、パニック発作が起きていないときも、いつ発作が起きるか恐れたり(予期不安)、一人で外出できなくなったり(広場恐怖)、うつ病を併発することもあります。
パニック発作とは
ある限定した時間内に激しい恐怖感や不安感とともに以下の症状のうち4つ以上が突然出現し、10分以内にピークに達するようです。
- 心悸亢進、心臓がどきどきする、または心拍数が増加する
- 発汗
- 身震い、手足の震え
- 呼吸が速くなる、息苦しい
- 息が詰まる
- 胸の痛みまたは不快感
- 吐き気、腹部のいやな感じ
- めまい、不安定感、頭が軽くなる、ふらつき
- 非現実感、自分が自分でない感じ
- 常軌を逸してしまう、狂ってしまうのではないかと感じる
- 死ぬのではないかと恐れる
- 知覚異常(しびれ感、うずき感)
- 寒気または、ほてり
パニック障害の原因と症状
パニック障害の原因は、幼少期の分離不安、強いストレス、繊細・神経質・こだわりや不安が強いなどの性格、遺伝的要因などが考えられるそうです。
寝る前など、リラツクス時ほどパニック発作を起こしやすく、また、パニック発作の経験が再発の恐怖を呼び起こすようです。やさしくて他人思い、神経質で不安が強い人、心配性でせっかちな人に多いそうです。
症状が進行すると、発作が起きたらどうしようという不安から、電車やエレベーターなどの閉鎖空間を恐れる「広場恐怖」に陥ります。
パニック障害には、前駆期があり、急性期は1ヶ月~1年、移行期は3ヶ月~1年、慢性期は半年~20年~30年のようです。
うつ病の人は、考えられなくなりますが、不安症の人は脳のある場所が働き過ぎています。また、脳が働きすぎると疲れてうつ病になることもあります。うつ病と心配性では脳の働きは逆の関係にあります。
うつに注意
長い間、強い不安感や恐怖心にさらされ続けると、その人本来が持っていた性格や行動パターンが失われて、攻撃的になったり、依存性が強くなったり、買い物やギャンブルなどに溺れてしまうこともあるようです。
仕事や勉強に打ち込むエネルギーが無くなり、何となく調子が悪い状態から過食へと進み、過眠をともなう非定型うつへと移行します。
- 非発作性愁訴の症状
- 熱感がある、血圧が上がり頭が膨れる感じ、胸がチクチクする、背中がピクンピクンする、脈が飛ぶ、動悸がする、視野がチカチカと揺れる、体全体にドクンドクンと脈をうつ、頭に何かが乗っている、胸が痛くなる、頭に血が上り、首や顔、特に眼が浮いてくるなどの症状が出ます。
非発作性愁訴は、服薬を規則正しく行うことで、症状が消えるそうです。また、怒り、依存、中毒、感情の起伏が激しくなっていくと、約6割がうつ病を併発します。
パニック障害やうつ病になると、激しい不安感や恐怖心で身体的にも精神的にも不健康な状態が続きます。激しい不安感や恐怖心を忘れるために、お酒やギャンブル、恋愛などに溺れて、社会的にも経済的にも追い詰められてしまうことも多いようです。
否定型うつ病の診断基準
下記の特徴がある場合、非定型うつ病と特定されます。
- 気分反応性(好ましいことがあると気分がよくなる)がある
- 気分反応性があり、さらに次の症状のうち2つ以上がある
- 著しい体重増加、または過食
- 寝ても寝ても眠い(過眠)
- 手足に鉛が詰まったような重さ、激しい疲労感を感じる(鉛様麻痺)
- 批判に対して過敏になり、ひきこもる
感情が過敏になる病気なので、プライドを傷つけないよう配慮が必要です。
定型うつ病と非定型うつ病の症状の違い
- 定型うつ病
- 何ごとにも集中力、興味、やる気がない。なかなか眠れず夜中に目が覚めて眠れない。食欲低下で体重が減る。朝から午前中に最も憂うつになる。
- 非定型うつ病
- 好きなこと、良いことがあると明るくなり、悪いことがあると強く落ち込む。1日10時間以上寝るか、ベッドに横になっている。過食になり、特に甘いものへの欲求が強くなり、体重も増加。夕方から夜にかけて憂うつになる。夜一人で泣くこともあり「夕暮れうつ病」と呼ばれる。
うつ病のはっきりした原因は解明されていません。しかし、生まれ持った性格、環境、発育過程の要因、体調などの要素のほかに、ストレスの受け止め方にうつ病の発症が大きく関係していると言われています。
非定型うつ病を悪化させる要因としては、昼夜逆転の生活、過食、インターネット依存などは健康を害して、ストレスを受けやすくしてしまいます。また飲酒、喫煙、カフェインを多く含むものなどは、不安感を強めてしまうので避けましょう。
パニック障害と脳の働き
パニック障害は、脳の警報装置が誤作動を起こし、それに感応して神経伝達物質が必要以上に分泌されて、危険な状態でもないのにパニック発作が起きてしまうことが関係しているといわれます。
危険を察知して恐怖心を呼び起こすのは、大脳辺縁系の扁桃体でここから指令が出て、脳幹部の青斑核などの自律神経の中枢に伝わり、さらにここでノルアドレナリンが分泌されて、血圧を高め心拍数を上げて、めまいや動悸なども起こすようです。
- 無理やり不安を抑えつけようとすると、不安が巨大化するようです。
脳に行く背内側前頭前野が客観視の働きをしていますが、客観視の働きが鈍ると、ぞぞれの不安が大きく見え、客観視が不安を大きく捉えてしまいます。
パニック障害の人は、健常者に比べると、前頭前野の血流が少ないそうです。
パニック障害に関係する神経伝達物質の役割
- アドレナリンは、血圧や心拍数を高め血糖値を上昇させて、交感神経に働いて興奮や緊張を高める神経伝達物質です。
- ノルアドレナリンは、不安や恐怖を感じたときに筋肉に血液を送り込んで心拍数を速くしたり、血圧を上昇させたりします。ノルアドレナリンが減ると意欲や集中力が低下します。
- セロトニンは、不安を抑え平常心を保つように働く神経伝達物質で、これが不足するとイライラ、不安、睡眠障害などを引き起こします。
パニック障害の治療薬
パニック障害には、抗不安薬と抗うつ薬が併用されます。
2008年に作られたパニック障害の治療のガイドラインでは、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とベンゾジアゼピン系抗不安薬との併用で治療を開始することが推奨されています。
SSRIは、不安を抑えて平常心を保つように働くセロトニンという神経伝達物質の量を減らさないように働く薬で、抗うつ薬の一つです。抗うつ薬は、毎日決められた量を飲んで、常に血中濃度を一定に保っておく必要があるそうです。
効果が出てくるまでに早い人でも二週間、遅い人だと2~3ヶ月かかるようです。医師の指示通りに飲まないといけません。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、興奮や不安をしずめるギャバという神経伝達物質の活性を高めて、パニック発作や予期不安を起こさないようにする効果があります。即効性がある薬で発作が起きたらすぐに服用する使い方もあります。
症状がよくなってパニック発作が起きなくなっても自己判断で服用をやめたりせずに、医師の指示にしたがいます。
ベンゾジアゼピン系のお薬は非常に安全性が高いとされています。が、ベンゾジアゼピン系の精神安定剤には耐性と依存性があります。耐性とはだんだん薬が効かなくなっていくことで、依存性とは薬が止められなくなることです。必ず医師の指示通りに、多少の不安感で服用しないようにする必要があります。
薬以外の治療法
- 認知行動療法
- パニック障害の患者さんの傾向は、
- (1)十分な根拠がないのにもかかわらず、断定してしまう
- (2)「オール・オア・ナッシング」的思考である
- (3)ものごとの悪い面だけをみてしまう
- (4)すべて自分の責任と感じてしまう
- (5)ものごとを自分の感情を基準にして判断する
- 認知療法は、このようなパニック障害の原因と考えられているかたよった思考パターンを正していく治療法だそうです。
- (1)十分な根拠がないのにもかかわらず、断定してしまう
- 考え方を変える
- ○○と思った。と、考えるそうです。ぐるぐると考えがまわっている時に考え続けると、俺はダメだとなります。そこで、ダメだと思った。と考えると、思っているだけで事実とは違う、となります。
- 考えの流れを止める
- 葉っぱの上に思っている考えを載せて、川に流すというイメージをするようです。目を閉じて、川のせせらぎをイメージします。そして、心の中にある気になることを葉っぱに1つ載せます。そして流します。次に、浮かぶ気になることを葉っぱに載せて流します。思考を流すことで、現実が見えるそうです。
- 腹式呼吸、ヨガ、坐禅、自律訓練法などで自分をコントロールする
- 交感神経が活発になり、緊張状態、動悸、過呼吸などパニック発作に繋がる原因を取り除き、副交感神経を活発にする為に、腹式呼吸の練習が必要です。また、ヨガ、座禅、自律訓練法も効果があります。
- 怖がって閉じこもるとダメだそうで、慣れて場数を踏むことが大切だそうです。座禅では、客観視を鍛えるようです。何も考えない、ふっと浮かんだ考えを受け流していきます。これが、不安への対応にも応用されます。座禅中の脳の血流は、緊張と弛緩の中間の辺りだそうです。
- 食事について
- 甘いものはよくありません。果物は良いです、りんごなどの丸かじりが良いそうです。全粒粉(ぜんりゅうふん)で作られたパン等はお薦めのようです。
- 薬物療法でSSRIが治療に用いられますが、それはセロトニンを増やすために使われます。セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンからビタミンB群などが手伝って生合成されます。必須アミノ酸は体内で合成出来ないので、食物から摂取するしかありません。つまり脳内のセロトニンを増やすためには、トリプトファンとビタミンB群を摂る必要があります。
- トリプトファンを多く含む食品は、乳製品 卵 豆類 バナナ 海苔 マグロ等です。
- ビタミンB群を多く含む食品は次の通りです。ビタミンB1ではレバー、豚肉、豆類に多く、ビタミンB2ではレバー、乳製品、アスパラガス、アボガドに多く、ビタミンB3ではレバー、ピーナッツ、プルーンに多く、ビタミンB6ではレバー、かつお、マグロ、いわしに多く、ビタミンB12ではレバー、あさり、牡蠣、はまぐり、いわし、さばに多く含まれています。
- 他には、ビタミンCやカルシウムも必要です。カフェインの多い、コーヒー、お茶、コーラは控えます。つまり、バランスの良い食事をとることが必要です。
- 薬物療法でSSRIが治療に用いられますが、それはセロトニンを増やすために使われます。セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンからビタミンB群などが手伝って生合成されます。必須アミノ酸は体内で合成出来ないので、食物から摂取するしかありません。つまり脳内のセロトニンを増やすためには、トリプトファンとビタミンB群を摂る必要があります。
パニック障害の体験者
シンガーソングライターの円広志さんは、1999年の早朝番組に出演中に突然パニック発作に襲われました。最初に円さんは、体のふらつきを感じました。天井を見上げるとぐるぐる回っているように感じるほど体がふらついていたそうです。
さらに体の不調は続き、信号待ちで止まっている車の中で、しっかりブレーキを踏んでいるはずなのに周りの景色が動き始めました。しばらく仕事を続けていましたが、もう耐えられなくなり仕事を全てやめました。
夫人や昔からの仲間に支えられて治療を続け、円さんの症状は改善し、2008年からは朝のレギュラー番組やドラマにも出演できるようになったようです。
「パニック障害から立ち直って元気に仕事をこなす僕の姿を通して、『パニック障害は必ず治るよ。コンプレックスや遠慮を感じずに生きて行こうよ』というメッセージを届けたいです」と語っています。
その他にも、プロ野球選手の小谷野栄一さん、女優の田中美里さん、長島一茂さん、タレントの安西ひろこさんなどが、パニック障害であったことを公表されています。
東日本大震災で、突然大変な辛いこと、悲しいことに巻き込まれ、また、将来のことを考えると次々に不安が襲ってくることもあると思います。どうぞ、不安が巨大化することなく、上手に流されることを切に望みます。