痛風・高尿酸血症
痛風は、突然足の親指の付け根の関節が赤く腫れて痛み出します。痛みは骨折以上の激烈なもののようで、2、3日は全く歩けなくなるほどです。1週間から10日経つと、しだいに治まり、しばらくすると全く症状がなくなります。
そして、半年から1年経つと、また同じような発作がおこります。そうしているうちに、足首や膝の関節まで腫れ、発作の間隔も短くなり、腎臓などの内臓も侵されるようになってきます。
痛風にかかるのはほとんどが男性ですが、最近は若年化、女性化してきていると言われます。女性は女性ホルモンの影響で痛風楽天 になりにくいようですが、閉経後の女性は気をつけなければなりません。女性はアルコール摂取量が少ないからかかりにくいようです。
今では、5~600万人の痛風患者さんがいると推定されています。最近は発症年齢が若年化し、ピークが30歳代となっています。
痛風の症状
ある日突然に、足の親指の第二関節に(体温の低い場所ほど痛風の原因である尿酸が析出しやすい)激痛が走ります。この発作の痛みは、万力でしめあげるようだとか、骨折以上の痛みとか、風に吹かれただけで痛むとか言われます。発作が起きると2、3日は全く歩けなくなるほどです。
発作はどこの関節でも起きるようですが、最初の7割は、足の親指に現れるそうです。
痛風患者の増加と若年化
2010年に痛風で通院中の人は、全国で95万人となっていて、毎年右肩上がりとなっています。1986年の25万人と比べると約4倍に増えています。そして、1960年代は50歳代が一番多かったのが、1980年代には30歳代が一番になりました。
高尿酸血症の頻度は、成人男性の22~26%ぐらいだそうです。その中でも30歳代は30%と特に高くなっています。飽食の時代の影響とみられています。食生活を中心に生活の見直しが必要です。また、遺伝的な体質も関係あるそうです。
遺伝子変異と痛風発症リスク
尿酸を腸から体外に出す時に関わる遺伝子「ABCG2」に変異がある人は、日本人の約半数とみられています。痛風患者では8割以上に変異があるそうです。そして、変異があると、発症の危険性が3倍以上になると言います。
痛風の男性と健康な男性とで、この遺伝子の働きと痛風の発症リスクを防衛医大・東京大・東京薬科大のチームが調査研究しました。
20歳代以下(男性)で痛風を発症するリスクは、遺伝子「ABCG2」の働きが大幅に落ちている人は、22.2倍。
遺伝子「ABCG2」の働きが半分の人は、15.3倍。
遺伝子「ABCG2」の働きが少し下がった人は、6.5倍だったそうです。
防衛医大の遺伝子研究 2016.11
防衛医大の松尾洋孝講師らは、2015年に痛風に関連する5個の遺伝子を見つけました。そして2016年11月に新たに5個の遺伝子を特定したと発表しました。
この10個の遺伝子に変異があると、痛風になりやすくなると言います。5個は、尿酸やマグネシウムの体内での輸送や体外への排出に関わっています。他の5個は、機能がはっきりしないものもあるそうです。が、これらを標的にして新しい予防法、治療法の開発に繋げられる可能性が出てきました。
「痛風は、生活習慣病の一つとされるが、遺伝的な体質の影響が大きい。発症しやすい人は、予防に取り組んでほしい」と、松尾講師のお話です。
痛風の原因(尿酸が増える原因)
人間は肝臓で尿酸を作ります。そして、一部は腎臓から尿の中へ出します。残りは血管の中へ戻し、9割も回収します。なぜなら、尿酸には抗酸化作用があるからです。人はビタミンCを作れないから尿酸に抗酸化作用をまかせるようになったそうです。しかし、尿酸が少なすぎると、低尿酸血症では、運動後に腎不全が起きることもあるようです。
多くの哺乳類は、体内の酵素で尿酸を分解するそうです。しかし、人間などは、進化の過程で酵素の働きが失われ、尿酸を利用し始めたようです。それにより長生きになったとも言われています。
痛風発作が起きるのは、血液中に尿酸が多くなり「高尿酸血症」の状態になっているからです。尿酸の結晶が関節などにたまると激しい痛みを伴う炎症発作を起こします。また、血中に尿酸が多いと血管の細胞が尿酸を取り込み血管の壁が太くなり、血液の通り道が狭くなって動脈硬化を起こします。そして、腎臓病や脳卒中などの危険性も高めます。
- 尿酸が体内で多く作られる(先天性の代謝異常、造血器疾患、無酸素運動、アルコール過剰、食事、肥満など)
- 尿酸の排泄が悪い(遺伝的体質、無酸素運動、脱水、アルコール過剰、肥満、腎不全など)
- 1と2の両方
体内の尿酸プールは1日800~1200mgです。
体内で合成される尿酸と食事からの尿酸は6:1となっています。3:1と言われる医師もいます。
尿中への排泄は400~800mg/日、便中への排泄は100~200mg/日です。
高尿酸血症とは
正常値な血清尿酸値は、 7.0mg/dl以下(年齢・性別を問わず)です。
高尿酸血症は、血清尿酸値 7.0mg/dlを超える場合(年齢・性別を問わず)が当てはまります。
正常な人の体の中には、常に約1200mgの尿酸があります。このうち約700mgが毎日入れ替わっています。この尿酸バランスがくずれ尿酸が多くなると高尿酸血症となります。
薬を飲んで血清尿酸値が 7.0mg/dl以下だと、激痛が起こる人は1割に減ります。そこで、もう治ったと治療を放置していると、少しずつ尿酸値が上がり、ある日突然心筋梗塞を起こすということもあるようです。治療はくれぐれも継続してください。
尿酸の原料「プリン体」とは
プリン体は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)といった細胞の核の中にある核酸などを構成する成分です。(御菓子のプリンとは関係ありません)だから、魚卵などの小さい粒がたくさんあるものは、プリン体が多いと言えます。
プリン体はからだの中で分解され代謝されると、最終的に尿酸という形で排泄されます。尿酸はそれ以上分解されないのでからだにたまると痛風が起きます。
痛風予備軍の人は、プリン体を1日400mg以下にするとよいようです。
痛みの原因は
尿酸が体液に溶ける範囲を越えて高濃度になると、針状の結晶となり、関節の周辺にたまるそうです。それが、刺激をうけるとはがれ落ち、それを異物とみなした白血球が攻撃して炎症を起こし、痛みの激しい痛風発作となります。
痛風の検査
- 血液検査で血中の尿酸値を調べます
- 検尿で一日に排泄される尿酸排泄量を調べます
- 患部の関節から関節液を採取して調べます
- 関節X線検査
- 患部の結節部の組織検査
上記の検査が必要に応じて行われます。
血液中の尿酸値の標準は、7以下ですが、痛風を発症しやすい人は、6未満を目指すようにしてください。
痛風の治療(薬と生活習慣の修正)
薬は、3つの型に分けて処方されます。
尿酸合成過剰型 | 尿酸の合成を減らす尿酸合成阻害薬(アロプリノール)が処方されます。 |
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尿酸排泄低下型 | 尿酸がたくさん尿へ排泄されるように尿酸排泄促進薬(プロベネシド)処方されます。 尿が酸性(pH<6.0)になると尿酸が溶けにくくなるので、尿アルカリ化剤(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム)も処方されます。 |
混合型 | 尿酸合成阻害薬と排泄促進薬が処方されます。 |
治療は、薬でのコントロールが中心となりますが、生活習慣の見直し、修正も大切です。
- 肥満があればやせる
- 尿酸を増やさない食生活を習慣にする
- 水分を十分にとる(1日2リットルの水分をとるようにしてください)
- 飲酒を控える
- 激しい運動は避け、適度な有酸素運動をする(内臓脂肪が減ります)
40年ぶりとなる新薬が、1912年4月に帝人ファーマから出ました。痛風の原因となる尿酸の生成を抑える「尿酸生成抑制薬」で、自社開発した「フェブリク」(成分名=フェブキソスタット)です。
その効果を実感する声が医師や患者の間で広がっているそうです。すでに世界約30か国で販売されているようです。
痛風から来る合併症
- 脳血管障害・・・高血圧、動脈硬化、脳卒中
- 糖尿病
- 心疾患
- 腎障害(痛風腎)・・・腎臓に尿酸結石が増えて腎機能が低下する
- 尿路結石
- 痛風結節
痛風の人の食生活の見直し
食べ過ぎると、尿酸が過剰になり体内に蓄積します。飲み過ぎると、腎臓から尿酸の排泄を妨げる物質が出ます。内臓脂肪は悪玉アディポカインを出し、大量の尿酸が作られます。日頃の摂生が大事になってきますね。
日本では、明治時代の初めまでは、痛風患者はほとんどいなかったようです。肉を食べる機会の増加と欧米化の食生活で患者が増えたと考えられます。また、男性患者の方が多いですが、これは、女性ホルモンが尿酸を体外に出す作用があるためです。女性も閉経後は、発症しやすくなります。
痛風関連の遺伝子の中には、アルコールを分解する酵素の遺伝子もあります。変異が無いと酒には強いが、痛風になる危険性は変異のある人の約2.3倍だそうです。飲酒量が多いと痛風になりやすいことになります。
バランスの良い食事をしましょう
主食 ごはん、パン、麺類を毎食適量をとりましょう。夜遅くには控えめにしましょう。
主菜 魚介類、肉類、卵、大豆・大豆製品をメインにしたおかずは1品にしましょう。(魚介類は健康に良いと思われますが、プリン体を多く含む食品があり、食べ過ぎれば逆効果となります)
副菜 野菜、海藻、きのこ、芋、豆類などがメインのおかずは毎食2品以上そろえましょう。
汁物 塩分のとりすぎを防ぐためにも1日1杯を原則にしましょう。
油脂類 揚げ物をはじめ、炒め物、マヨネーズを使ったサラダ、パンに塗るバターなども油を使った料理です。毎食1品までにしましょう。
間食 御菓子類よりも、果物や乳製品など、日ごろとっていないものがあれば間食でとるようにしましょう。
水分を十分にとりましょう
水分をしっかりとって尿量を増やし、尿と一緒に尿酸を排泄しましょう。1日の尿量が2000ml以上になるようにしましょう。
果糖は控えめに
果糖を燃やす段階で、尿酸ができます。ソフトドリンク類もよくありません。
アルコール類はひかえましょう
アルコール自体に、肝臓での尿酸産出を亢進させ、腎臓からの排泄を低下させる作用があります。適量の範囲で飲んでいても尿酸値が高い場合は、週に1、2日は飲まない日をつくるようにしましょう。
1日のアルコールの適量、下記のいずれかです。- ビールロング缶(500ml) 1本
- 日本酒 1合
- ワイン 1/3本
- ウイスキー シングル2杯
プリン体をとりすぎないようにしましょう
尿酸値の上昇については、食事からの影響より体内での合成や排泄の影響が大きい事が明らかになってきましたが、ブリン体の多い物は連続して大量に食べないようにしましょう。
動物の内臓や魚の干物、白子などに多く含まれています。明太子、納豆にも多く含まれています。
肉は、よく茹でてから食べましょう。鶏の手羽先なども切り目を入れてから茹でます。
果糖は、肝臓で分解する時に、尿酸が上がる作用があるそうです。
アルコールは、尿酸値を上げるので控えます。野菜や豆類のプリン体は、痛風とは関係ないと言います。
食品 | プリン体の量 |
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大正エビ100g(5尾程度) | 273mg |
鶏レバー70g(焼き鳥2本分) | 219mg |
豚レバー70g(レバにら炒め1人前) | 199mg |
牛レバー70g(レバにら炒め1人前) | 154mg |
かつお100g(刺身5きれ) | 211mg |
アンコウ肝酒蒸し50g(1人前) | 200mg |
さんまの干物75g(1尾) | 157mg |
マイワシ丸干し60g(2尾) | 183mg |
高尿酸血症とメタボリックシンドローム
高尿酸血症の人の8割が、肥満、高血圧、高脂血症、高血糖などの生活習慣病を持っているようです。高尿酸血症も心血管系疾患の危険因子になりうるので肥満があれば早めに解消し、尿酸値は低めに保つようにしてください。
減量をするだけで、尿酸値が下がります。88kgあった人が、通勤で片道40分歩き、休み時間にジョギングを30~40分を週に2~4回して、75kgになりました。そうすると、8.7mg/dlあった尿酸値が6.8mg/dlに下がったそうです。ウオーキングなどの有酸素運動を続けることが、良い結果になったようです。
痛風にならない内に対策してください。薬を勝手にやめると、知らないうちに慢性腎臓病になっていることもあるようです。腎臓は一度壊れると二度と回復しません。注意してください。
肥満の原因となるものは
- 甘い物、スナック類のとりすぎ
- アルコールの飲み過
- 野菜や海藻、きのこが不十分
- 外食が多い
- 油っこいもの、脂肪の多い食品のとりすぎ
- 食事が不規則
- 早食い傾向である