認知症と地域医療
認知症の症状によっては、家での介護が続けられないために、やむなく精神病院に入っている人も多いようです。しかし、まだ地域で支えることができるのではないかと、訪問診療をしている精神科医の方もいらっしゃいます。
年々増え続ける認知症、工夫次第で精神症状のある人でも支えられるそうです。
父親を介護している50歳代男性の場合
15年前に母親を亡くした50歳代男性は、父親と二人暮しです。父親は昨年夏まで畑仕事をしていましたが、秋に認知症楽天 と怪我で入院しました。
退院後、夜中に大声を出します。一晩に20回トイレに行くと言って起こします。1日だといいけれど、2、3日と続くと一人では限界でした。
夜眠れない、目が離せない、介護サービスを頼むと暴力を振るう、という状況で今年2月に精神病院へ入院しました。面会に行くと、両手・両足を縛られてベットに寝かされていました。目は開いていたけれど、涙を流していたそうです。
すぐに転院先を探したが、なかなか見つかりませんでした。車椅子に拘束され、おむつを当てて寝ている時間が長くなり、10日後ぐらいから痩せてきて立てなくなるし、言葉もしゃべれなくなりました。
1ヶ月半後介護施設に変わりましたが、肺炎を起こして亡くなりました。
50歳代男性は、「精神病院に入院後、5ヶ月で死亡。まさか、こんなことになるとは思わなかった」と言います。
認知症で、昼夜の逆転があり、家に帰りたいと介護施設では暴力を振るうし、自分は仕事があるので精神病院に入院するしかなかった。
精神病院では
認知症の人は、身の回りのことはできます。
精神病院ではボーッと過ごすことが多くなります。そして、生活能力が落ちます。本人の身の安全や他人に危害を加える人は、拘束します。
転倒防止のため半分の人が、車椅子に拘束されます。そして、筋肉の衰えや歩けなくなります。
精神科医の訪問診療
千葉県旭市の精神科医、上野医師の取り組みが紹介されていました。上野医師は、社会福祉法人・ロザリオの聖母会、海上寮療養所の副院長だそうです。
上野副院長は、2年前から認知症の人の訪問診療をしています。
90歳代の男性の場合
90歳代の男性は、息子の家族と暮らしています。2年前に家族に対して怒りっぽくなり、皿やコップを窓から投げました野球をしていたから、よく投げるそうです。
また、他人の車に落書きをしたり、玄関に火をつけたりしました。
上野副院長の適切な処方と、介護する家族を支えることで、落ち着いているようです。また、上野副院長は、自身の携帯番号を家族に教えています。家族は、いつでも先生に相談できるという安心感があります。
現在では、激しい症状はみられなくなったそうです。
医師としては、患者さんの環境や生活の様子が直接わかるのが良いそうです。患者としては、受診の負担が少なくなります。
精神科医としての転機
以前勤めていた病院では、認知症の人は精神科へ入院させることも多かったようです。300人のうち本当に入院が必要だった人は8人だったそうです。
家族が楽になり感謝されることも、入院を後押ししたようです。安易に入院を勧めるのではなく、まだまだ地域で暮らしていけるのではと考えられました。
また、介護施設も訪問され、認知症の人を診ておられます。夜眠れない、意識障害がある、すぐ怪我をするなどの症状がある女性の相談がありました。
その女性は、2年間飲み続けていた睡眠薬のせいかもしれないので、副作用の少ない薬に変更してもらえました。
介護者も相談すると、すぐに対策をうって貰えるので、安心のようでした。
上野副院長は、「黒子(くろこ)の役割が医療の姿ではないかと思う」と言われていました。また、「居心地の良さ、居場所の良さ、今日一日の満足」が与えられるようにとも言われていました。