認知症の原因と治療他
社会の高齢化に伴い、2010年には、65歳以上の高齢者の約8%に当たる226万人が認知症になると推定されていました。
認知症の原因と治療などについて勉強していきたいと思います。
認知症の原因と種類
- アルツハイマー病(認知症の50%を占めます)
- 認知症楽天 の半分を占めます。神経細胞の脱落によって脳が広範囲に萎縮し、βアミロイドというたんぱく質が神経細胞の周辺に蓄積されます。神経細胞の中には、タウたんぱくがたまり、神経原繊維変化が見られます。早い人では、40、50歳代から発症し、90歳代まであります。多くは70、80歳代です。記憶障害が起きて買い物もできなくなります。
- 血管性認知症(脳卒中が原因)(認知症の30%を占めます)
- 脳出血や脳梗塞などの脳血管障害によって、大脳の認知機能に重要な役割を果たす部分の神経細胞が障害され認知症を起こします。治る病気ではないが、進まないようにします。家庭では、夢中でできること、楽しんでできることを長時間できるようにします。家族と会話やコミュニケーションができるものがいいですね。折り紙や計算問題をしている人もいます。血管性認知症では、感情の起伏が激しくなる傾向があるようです。
- レビー小体型認知症(認知症の10%を占めます)
- 小刻みで前かがみの歩行、身体全体の動きが悪くなるパーキンソン症状と認知症の症状を同時に示し、幻視体験を伴う変性性認知症。進行は比較的早く、脳全体にレビー小体と呼ばれる異常なたんぱくの塊が沈着して起こるそうです。アルツハイマー病との診断が難しいそうです。幻視(虫や人が見える)や運動障害(動作がゆっくりになる)に効く薬で症状を改善することができます。しかし、時間の経過とともに徘徊、興奮などが表れてくるようです。
- その他の認知症(認知症の10%を占めます)
- 脳腫瘍、脳の感染症、頭部外傷や脳挫傷や身体疾患が原因で認知症が引き起こされることがあります。前頭側頭葉変性症では、自己抑制がきかなくなり、食行動の異常や反社会的行動が特徴だそうです。
認知症の条件
- 明らかな記憶障害がある
- もの忘れ以外の認知機能障害
- 生活に支障が出ている
上記の3点が出て、初めて認知症と診断されます。
認知症の検査
まず、問診で病歴、生活暦、生活の上での障害などを聞かれます。家族にも聞かれますが、本人から聞き、会話から記憶障害なども判断されます。次に、心理テストや認知機能検査(MMSE)、CT検査やMRI検査が行われます。脳の血流を調べるPETやSPECTなどが行われることもあります。
- MRI検査
- 脳の海馬がやせてきます。(早期には異常がない場合もありますし、やせていても症状がない場合もあります)
- FDG-PET検査
- FDG-PET検査と問診とで、認知症の危険性の診断がされます。FDG-PET検査では、神経細胞の働きが低下した所が青色に出ます。もう少し進んだ場所は黄色になります。青い点々は誰にでもあり、歳相応で病的ではありません。
- STM-COMET(エスティーエム・コメット)
- 早期認知症の兆候を調べるものです。3つの検査をおこなって調べます。最初は15の言葉を見せて、覚えてもらいます。そして、覚えた物を書いてもらいます。次に数字を4つ見せて、もう1つの数字を見せ、前に見た4つの数字の中にあるか、ないかを○×で書いてもらいます。最後に、始めに覚えた言葉を、もう一度思い出して書いてもらいます。最後のは、近時記憶検査と言うそうです。真ん中の数字の検査は、干渉問題で、記憶を妨害する問題です。最初と比べて最後で3つ以上少なくなっていたら、認知症に繋がるようです。
アルツハイマー病、血液1滴で検査
国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)は、2014年1月21日、1滴の血液でアルツハイマー病などの検査を簡単にできる新しい装置を開発したと発表しました。その装置は他の病気にも使えるようで、家庭向けの医療機器として2015年度末までの実用化を目指しているそうです。
今は、医療機関での採血後9~20時間かかるようですが、この新装置ができると家庭で血液を取って10~30分で検査結果が出ると言います。手軽に検査できるので、アルツハイマー病のような進行の遅い病気を早期発見でき、医療費の抑制に繋がるそうです。
この新装置は、病気にかかると発生する抗原(タンパク質)を利用し、この抗原に反応する抗体の微粒子を組み込んだカード型装置に採取した血液を載せます。すると、抗原抗体反応を起こした時に発生する微弱な電流を感知して病気を特定するようです。複数の抗体を組み込めば、一度に数種類の病を検査することも可能だそうです。
また、この解析機器から病院やスマートフォンにデーターを送るシステムを作ることも目指しています。検査したいと思っても、アルツハイマー病などの検査には恥ずかしさもあってなかなか行けないと思いますから、自分で簡単に検査できようになると助かりますね。
MCI(軽度認知障害)の条件
- 年相応でない強い物忘れがある
- 生活にほぼ支障がない
MCI(軽度認知障害)の約10%の人が、1年のうちに認知症へ移行しているそうです。自発的に行った行為を忘れる、最近のことを忘れるなどは要注意です。
家族が認知症になったら
- 薬物療法をきちんと行う(進行を遅らせるために)
- 塩酸ドネベジルという薬が使われます。1日1回飲みます。重症の場合は10ミリまでです。
- 脳や体を適度に使う(臨床心理士などの協力のもとに行います)
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- 回想法
- 音楽療法
- 芸術療法
- メモリートレーニング
愛知県北名古屋市には、国立長寿医療センターの指導を受けて、「懐かしい昭和の町並み」が作られています。懐かしい風景を見ながら、思い出話をすると、認知症の発症を遅らせたりできます。脳の危険な場所の血流が増えます。
定期的に集まり、自分から、話すことでが大切です。そして、さらなる思い出を連想すると良いです。「一日一昭和」の話を家庭でするとよいそうです。
「地図回想法」は、子どもの頃の自宅や周辺の地図を描くというものです。
「写真回想法」も良いそうです。いろいろと話がはずむと良いですね。
治療法に疑問があった場合などには、「日本老年精神医学会」や「日本認知症学会」などのHPを調べてください。近くのお医者さんがわかるかもしれません。
認知症の患者さんが、穏やかになったマッサージ法(ソフトタッチ法)
認知症の方全員に効くとは限りませんが、マッサージを拒まない人には、マッサージをしてあげるとよい結果が出ることもあるようです。
マッサージをすることで、明らかに攻撃性が減り、ストレス物質も減少することが判明しています。(浜松医科大)このマッサージは触るだけですが、その触るスピードにコツがあり、1秒間に5㎝の早さでゆっくりと動かします。このスピードで触った時が、人は最も気持ちよく感じると様々な研究でわかっているそうです。
- マッサージの方法
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- 両手で相手の手を包み込むようにして、手首から指先までをゆっくり触ります。
- 手の甲や指を、相手の気持ちをいつくしむように何度も触れます。
この時に、すべりをよくするためにオイルを使ってもよいです。くれぐれも、相手がいやがるときは無理に行わないでください。1日10分を目安にして下さい。
アルツハイマー病の最新情報
- 根本治療薬(βアミロイドがたまらないようにする薬)
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- 酵素の働きを抑える薬(γ-セクレターゼ阻害薬、β-セクレターゼ阻害薬)
- 脳の炎症を抑える薬(NSAIDS、非ステロイド抗炎症薬
- 抗体医療)
- 症候改善薬
- 塩酸ドネベジル(今、使われています)、治験中の薬として、カランタミン、リバスチグミン、メマンチンがあります。
アルツハイマー型の患者の脳は、後部帯状回という場所から機能低下が始まるそうです。ここに脳のシミが集中してできるそうです。だんだん近くの表面にも広がっていきます。青から黄色へとFDG-PET検査では、色が出てきます。記憶の保持機能が低下し、数分前の記憶を保持できなくなります。
アルツハイマー病は、脳が急激に萎縮していきます。記憶力や判断力が失われていきます。現在の薬はアリセプトという薬だけだそうです。一時的に神経細胞を活性化させますが、進行を遅らせることはできません。
今、進行を止める薬が開発中です。アバディーン大学のレンバー教授が、脳にアミロイドβがたまった後に、神経細胞の中のタウという物が集まって、それから神経細胞が死滅しますが、このタウを分解する物質を発見しました。
その薬がレンバーで、今臨床試験の最終段階へと進んでいます。これが、成功すれば、アルツハイマー病の進行を遅らせる薬が出来上がります。
アルツハイマー型認知症の新薬、保険適用を承認
厚生労働省は3月2日、アルツハイマー型認知症治療薬の新薬として、第一三共の「メマリー錠」と、ヤンセンファーマの「レミニール錠」の保険適用を承認しました。
現在、国内で保険適用のアルツハイマー型認知症治療薬は、エーザイの「アリセプト」(一般名は塩酸ドネペジル)しかありませんでした。
新たに2種類が加わりアルツハイマー型認知症治療薬の選択肢が広がったようです。また、6月には内服薬ではなく、貼るタイプの薬が出るそうです。それは、胃腸症状が少なく、他の人が見ても使用していることが分かって、その点はいいかもしれません。
メマリー(成分名はメマンチン塩酸)第一三共発売
メマリーは、アルツハイマー型認知症の中程度から高度の患者さんに使われます。1日1回の服用です。攻撃性や行動障害などの行動心理症状の進行を抑制すると言われています。
メマリーは、5mg1錠133.90円、10mg1錠239.20円、20mg1錠427.50円のようです。
レミニール(成分名はガランタミン臭化水素酸塩)ヤンセンファーマ発売
レミニールは、アルツハイマー型認知症の軽度から中程度の患者さんに使われます。1日1回の服用です。口の中で溶ける錠剤とシロップの2種があるようです。
レミニールは、4mg1錠119.60円、8mg1錠213.80円、12mg1錠271.00円のようです。
認知症の介護の問題点
もの忘れ、認知機能障害といった認知症独特の症状以外に、残った機能が引き起こす周辺症状があります。これは、抑うつ、幻覚、暴言、暴力となって現れます。
認知症の人は、、だんだんと身近な出来事から忘れていき、家族を忘れ青年期を忘れ最後に幼少期を忘れるという具合だそうです。
認知症の人の訴えを否定するのではなく、受け入れて「そうなのね」という受け入れてもらえる言葉、態度に安心するようです。何もかも忘れていく恐怖に戸惑って不安なのは、本人が一番でしょう。そういうことに理解を示せば、おだやかになっていったという例をテレビで放送していました。
認知症患者を一人で家で見ていくのは、心身ともに疲労が重なります。特別養護老人ホームへの入所を申し込み、最後の砦を確保したことで、介護者の気持ちに余裕が出てきたと話しておられました。
つじつまの合わない話にも「あ、そうなの」という返事で対応されているそうです。いつ家族が罹るか、自分が罹るかわからない認知症、高齢社会に向けて、もっともっと良い治療法、薬、ケア法、予防法が出てくることを期待しています。2009.12.14
バリデーション・価値を認める
認知症の人の価値を認めると、興奮やイライラが半分ほどに減ったという報告があります。具体的には、以下のような対応をすると良いらしいです。
- アイコンタクトをする。認知症の人が話す言葉を、こちらも繰り返す。
- 思い出話をする。
- 優しく手などに触れる。手を握る。
センター方式(ケアマネージメント)
認知症の方の絵を真ん中に描き、その周りのいろんな場面で認知症の方が言われた気になる言葉を書きます。その言語に対して冷静に考えた介護者の言葉を書いていきます。そうすると、認知症の気持ちが理解できやすいそうです。
介護者の「作ってあげる」「休んで」「やってあげる」と言う言葉に対して、認知症の患者さんの扁桃体という感情を司る場所は衰えないで最後まで残っているので、悲しいという感情が、積み重なっていくそうです。
「今までやっていたことができなくなり悲しい」「何もかもやってもらって、迷惑をかけて悲しい」という感情が積もっていくようです。
認知症の人との接し方のヒント
認知症になると、自己洞察力が失われます。また、人物の特定や顔の認識力が落ちてしまいます。
表情を変える、ゼスチャーをする、目を合わせることはできます。このできることを実行し、1否定しない、2ほめる、3役割を与えることで、不安や孤独を感じないようにすることが大切です。
治る認知症
物忘れが多くなったり、深夜に起きて家族に食事を求めたり、歩きにくくなったりと認知症のような症状をしている人の中には、はっきりとした原因疾患のある人がいます。そういう方は、手術や薬で治ることがあります。
特発性正常圧水頭症
脳や脊髄を覆うくも膜の内側には髄液が循環しています。髄液の一部は体内に吸収され、脳室では吸収分が新たに作られています。
何かの原因で髄液の循環が滞ると脳室に貯まって脳を圧迫します。歩幅が狭くなりすり足の状態になったり、物忘れなどの認知症様の症状、尿失禁の3症状を引き起こすそうです。これが、特発性正常圧水頭症の特徴です。
認知症とされる人の5~10%が特発性正常圧水頭症とも言われています。全国で約31万人が特発性正常圧水頭症だと推定されていますが、年間の特発性正常圧水頭症の手術数は、1200件しか行われていません。専門家でないと診断が難しいことや、高齢であることなどから積極的な治療法を探していないと思われています。
- 検査
- 頭部画像で脳室の拡大があったら、特発性正常圧水頭症の疑いがあります。また、腰から針を刺し髄液を少し抜いて症状が改善したら、特発性正常圧水頭症の疑いが強まります。
- 手術
- 髄液シャント術と言って、余分な髄液を体内の別の場所へチューブで流します。体内へそのチューブを埋め込みます。「VPシャント」は、脳室から腹腔へと髄液を流します。「VAシャント」は、脳室から右心房へ髄液を流します。「LPシャント」は、腰部くも膜下腔から腹腔へと髄液を流します。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、くも膜の外側の硬膜の内側に微量の出血が続き、数週間から数ヶ月で血腫ができ、脳を圧迫することで頭痛、歩行障害や認知症の症状がでます。
転倒などの軽い頭部打撲が多いそうですが、なくてもできることがあります。初期は自覚症状も乏しく、発見しにくいそうです。
手術で血腫を取り除きます。頭蓋骨に2~3cmの穴を開けて、硬膜を切り開き血腫に管を刺して中の血液を吸い出します。
その他の「治る認知症」
- 脳・硬膜動静脈奇形
- 摘出、血管内塞栓術などが行われます
- 甲状腺機能低下症
- 甲状腺ホルモン剤の服用などが行われます
- うつ病
- 休養、抗うつ剤などの治療などが行われます
- ビタミンB12欠乏症
- ビタミンB12を注射します
- 肝性脳症
- 食事中のたんぱく質制限、投薬治療などが行われます
認知症の予防法
- 糖尿病や生活習慣病
- アルツハイマー病になる前に脳にたまるアミロイドβは、認知症の発症の20年前からたまり始めているそうです。そして、糖尿病があると糖尿病が無い人と比べて1.8倍認知症になりやすいそうです。高血圧などの生活習慣病も認知症になりやすいです。糖尿病の人は脳の細い血管から出血しやすいです。出血すると近くの神経細胞が死滅していきます。40~50歳から糖尿病、高血圧の予防・治療を徹底する必要があります。
- 食生活の改善
- 認知症の男性患者は摂取するエネルギー量が健康な人に比べて約3割程度多く、穀類・肉類・植物油などの摂取量が多いそうです。女性患者は1日に必要なエネルギー量をとっていない人が多く、海草や緑黄色野菜の摂取量が非常に低いそうです。また、患者全員に共通した傾向として、青魚に多い不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の摂取割合が低いそうです。自治医科大学大宮医療センターの植木彰教授らの研究チームでは、「1日80gの青魚、最低2回の緑黄色野菜を摂ることが痴呆の予防には大切」と言われています。
- ケイセキの多い水は認知症を予防
- フランスの調査では、ケイセキを多く含む水を飲むことで、女性高齢者ではアルツハイマー病を発病する危険度を低めると結論づけています。
- 果物・野菜ジュースはアルツハイマーの発病を抑える
- アメリカの調査では、1週間に3回以上果物と野菜のジュースを飲む人は1週間に1回以下の人より、アルツハイマー病の発病を76%少なくないという調査結果を発表しています。
- 運動・昼寝が大事
- 運動は、軽く汗をかく程度の有酸素運動が良いそうです。1日20分以上で、週2回以上が理想です。高齢になると酵素の働きが弱くなりますが、運動すると倍近くの働きとなるようです。昼寝は30分程度がよく、長いのはよくありません。
- たばこは認知症を倍増
- オランダの調査では、喫煙する人ほどアルツハイマー病になりやすいことを明らかにしています。
- 脳を活性化させよう
- 趣味や新聞の速読など、脳を鍛えることをやってみましょう。
- 食事法
- バランスの良い食事をよく噛んでたべるようにしましょう。
- 肥満の予防
- 肥満は認知症になりやすく、メタボリックシンドロームや皮下脂肪が多い人は、アルツハイマーになりやすいという報告があります。