線維筋痛症
線維筋痛症は、最近になって知られてきた病気です。原因不明で筋肉がこわばり全身に激痛が続くという病気です。あちこちの病院、医師をはしごしてもなかなか診断がつかず、患者さんの「痛みを何とかして、病気は何なの」という悲痛な叫びが聞こえてきます。
また、原因が不明で検査にも異常が出ないため、痛みをわかってもらえず怠け病と周囲に思われ、二重、三重に辛い思いをしている人も多いようです。
線維筋痛症の患者さんは推定で212万人、そのうち重症者は30万人と言われています。
線維筋痛症は、女性が男性の7倍と多く罹っています。30代後半から60歳代の女性に多く日常生活が困難な例もあります。日本では人口の1.7%の200万人の潜在患者がいると言われています。全体の80~90%が女性だそうです。
脊椎関節炎の患者さんが合併症として線維筋痛症に罹っていることが多いと最近わかったそうです。関節リウマチの人が線維筋痛症との合併を起こしている率は、15.8%だそうです。
線維筋痛症の患者さんの症状
23歳の女性は午前2時頃になると、ガラスが突き刺さったような痛みが起きます。午前5時にはおさまりましたが、2~3日に一度こういう症状が起きるそうです。
この女性は18歳で発症しました。モルヒネなどの薬を使っても12時間しか効かないそうです。他には、抗うつ薬なども処方されています。
線維筋痛症の人は夜中に痛む人が多いようです。心の孤独が関係しているのかもしれないということです。この女性は8歳で祖母の死、10歳でリストカット、15歳で両親の離婚、16歳で婚約者が自殺という大変な人生を歩んで来ました。
線維筋痛症は、女性に多く中高年に多いようです。それで、病院でも自律神経失調症、更年期障害楽天 、不定愁訴などの病気と診断されることもあります。
筋肉が引き裂かれるような痛み、ガラスの破片が刺さったような痛み、体の中で爆発が起こったような痛みなどの他にも、こわばり感、倦怠感、疲労感、睡眠障害、抑うつ、自律神経失調、頭痛、過敏性腸炎、微熱、ドライアイ、記憶障害、集中力欠如などの症状が出てくるようです。
50歳代の女性は、もともと軽い腰痛がありました。母の介護で疲れていましたが、母が亡くなってから、全身が痛くなり医者を転々としていました。様々なストレスを抱えていたと言います。線維筋痛症は、肉体的ストレス(過労、けが、病気、事故、手術、妊娠、出産など)と精神的ストレス(人間関係、仕事、介護、離婚など)が合わさって発症するようです。
子どもの患者も
数は少ないが、10歳前後の女児に多いそうです。鎮痛薬の効果が乏しいとか。
精神的ストレスが背景にあることも多く、普段の環境から一時引き離し、並行して保護者を指導する方法が効果を上げていると言います。
「早期に治療を始めれば普通に近い生活を送れる人も多いので、それを早く知らせたい」と、患者会の橋本裕子理事長は言っています。
患者会の連絡先は、電話・・・045-845-0597 平日の午前10時~午後4時まで相談に応じています。
線維筋痛症は、なぜ激しい痛みを感じるのか
線維筋痛症は何らかの免疫異常で、ストレスや外傷がきっかけで起きることもあります。
線維筋痛症の患者さんは、脳が本来は1の痛みを10~100倍感じるようです。光、気候、音、風などの刺激によっても起きるそうです。症状には個人差があり、リウマチや他の膠原病に罹っている時もあります。
脳から末梢への痛みの刺激の伝達には、アクセルとブレーキがあり、アクセルが踏みっぱなしという状況のようです。まだ、詳しいことは解明されていません。内科的検査を行っても、どこにも異常が見られないのです。
痛みを測るペインビジョンでは、リウマチの人の痛みが400で、線維筋痛症の人の痛みは1215だそうです。リウマチの人の約3倍の痛みに耐えているのです。
線維筋痛症の診断は 2011年に大幅改定
線維筋痛症の診断は全身の19箇所の痛みに加えて、精神的症状、自律神経の乱れによる症状も点数化し、最重症は計31点になるようにしました。11点以上が3ヶ月以上続き、他の疾患が否定できる場合に線維筋痛症と診断されます。
血液、CRPという炎症反応、筋電図、筋肉の酵素、レントゲン、CT、MRIを検査しても異常がなく、いろんな診療科を渡り歩くという結果を招いています。
繊維筋痛症の診断で注目する痛みの場所は、あご(左・右)、首、肩(左・右)、胸、腹部、背中(上・下)、上腕(左・右)、前腕(左・右)、尻(左・右)、太もも(左・右)、膝から下(左・右)です。
線維筋痛症の治療
線維筋痛症は、60%は薬で改善すると言います。
リリカ(一般名プレガバリン)は、帯状疱疹の痛みの緩和に使われてきました。2012年6月、繊維筋痛症の初の保健薬として承認されました。副作用は、眠気ふらつき、太るなどがあります。抗うつ薬は、痛みを和らげる働きが期待されています。臨床試験が最終段階に来ているそうです。漢方薬なども使われます。
非薬物療法としては、30分体を動かしたら10分休む、軽めの運動として散歩やラジオ体操をする、などの生活改善、不安等を取り除く心理療法なども効果があります。そして、何よりも周囲の理解と協力が患者さんに大きな力を与えてくれます。そして、自分でも病気を理解することが大切です。リウマチ科、心療内科、整形外科、ペインクリニックなどで診てもらえます。良い先生に会えると良いですね。
アロディニア症
全身に痛みを感じる女性がいました。いろんな病院を受診しましたが、異常なしといわれました。腰が一番に痛んだので腰痛症だろうと診断されました。しかし、両腕や全身にまで痛みがきてしまいました。
この女性は、総合科医に診てもらったら、アロディニア症と診断されました。
3つの痛みがある。チリチリした痛み、太い針を刺されたような痛み、小さい針を刺されたような痛み。身体全体に痛みが出る。きっかけなく痛みが現れる。
上記の3つの特徴から、アロディニア症と診断されました。異痛症とも呼ばれるようです。この病気は女性が罹りやすいそうです。長い間の腰痛の刺激を受けて視床からのセロトニンが減少し、痛みを感じるようになりました。痛みが変化するのは脳の機能障害です。性格にもよるようですが、ストレスに弱い性格の人が罹りやすいと言います。
この女性は、診断がついてほっとされました。そして、東洋医学も取り入れて漢方薬でじっくりと治していくそうです。
腰痛症との診断では納得いかなかったと思います。本当の病名がわかることは、本当に患者さんにとって前向きに治そうと前進できるきっかけとなりますね。本当に良かったと思います。